ISO9001活用術:認証を超えた運用法
ISO9001というと、「認証を取得するもの」というイメージ……
前回のコラム「部署のビジョンを作る方法」では、部署ごとのビジョンを設定する重要性と、その作り方について解説しました。今回は、具体的な企業の事例を用いて、どのように部署のビジョンを作り、会社全体のビジョンと紐づけていくのかを詳しく説明します。
事業の業態や組織の規模によっては、以下の事例と同じようにはできない場合もあるかと思います。例えば、あまり人数が多くない部署の場合は、その部署のリーダーの方が一人で検討することになるかもしれません。そのような場合でも検討の進め方の骨格は変わりませんので、ぜひ参考にされてください。
↓ 前回のコラムはこちらです。
株式会社ABCは、急速な技術進化と市場変化に対応するため、会社全体のビジョンを再定義することを決断しました。これに伴い、各部署が自らの役割を明確にし、より具体的なビジョンを策定することが求められました。
製造部は、品質管理と生産性向上において重要な役割を担います。以下に示す製造部のビジョンを作成した経緯を見ていきましょう。
製造部の理念は、会社全体の理念と整合性を持たせつつ、製造部が果たすべき役割を明確にすることを目的として作成されました。
製造部の環境分析は、社内の関係者とのヒアリングやデータ分析を通じて行われました。経営層や現場のリーダーからの意見を集約し、実際の生産状況や過去の品質データを基に、強み・弱み・機会・脅威を整理しました。以下の例では、それぞれの内容を1項目にまとめていますが、通常は複数の項目が抽出されることが一般的です。
環境分析 | 内容 | 抽出方法 |
---|---|---|
強み | 最新設備の導入、高い技術力 | 設備投資の履歴や技術者のスキル評価を基に特定 |
弱み | 生産プロセスの一部に非効率な部分がある | 生産データの分析や、現場作業者のフィードバックをもとに抽出 |
機会 | 市場の成長、新技術の活用 | 業界レポートや市場調査を基に予測 |
脅威 | 競合企業の台頭、原材料価格の高騰 | 競合分析や過去の価格変動データをもとに特定 |
SWOT分析で抽出した各要素をクロス分析し、それぞれの項目を照らし合わせながら、適切な打ち手を検討しました。ここでは説明のために簡略化していますが、実際の企業では、各施策の実現可能性やリソース配分なども考慮しながら具体的なアクションプランを策定しています。
ビジョンの策定にあたっては、会社のビジョンと照らし合わせながら、製造部の数年後の理想像を描くことを重視しました。具体的には、
ここで紹介した事例はあくまで一例ですが、ビジョン策定の基本的なフレームワークとして活用できます。ビジョンは、会社全体の目標と連携しながら、各部署が具体的な目標を持つことで、全体のシナジーを生み出す重要なツールです。実際の企業での導入時には、自社の状況や特性に応じてカスタマイズすることが求められます。