ラクに・確実に!ISO9001マニュアル改訂を成功させる実践ステップ
ISO9001認証を取得した企業にとって、「品質マニュアル」は長年運用してきた大切な文書です。しかし、ISO規格は時代とともに変化しており、特に2008年版から2015年版への改訂では、マニュアルや手順書に対する要求事項が大きく見直されました。
今なお2008年版の構成を色濃く残すマニュアルをお使いの企業では、過剰な記述や管理負担が温存されているケースも少なくありません。
本コラムで紹介するのは、そうした状況を見直すための実践的な手順のひとつです。状況に応じて調整は必要ですが、考え方の軸として活用すれば、マニュアル改訂の流れを整理するフレームワークとして有効に機能します。
今回は、ISO9001マニュアルを見直すべき理由と、現場に即した進め方、注意点についてわかりやすく解説します。
📌 マニュアル改訂の必要性
ISO9001:2015年版では、「品質マニュアルの作成」は明示的な要求事項ではなくなりました。その代わりに、必要な情報が維持・伝達されていることが求められます。これは、組織の実情に合った形でマネジメントシステムを運用すべきという考え方に基づいています。
それにも関わらず、かつてのように細かく定義されたプロセスや手順が、実態と乖離したまま残っていれば、形骸化や負担の増大につながります。
🔍 ISO2008年版と2015年版の違い:不要になった文書の見直し
例えば、以下のような文書は2015年版では明確な要求事項ではなくなっています:
- 品質マニュアル
- 品質手順書(6つの手順書:文書管理、記録管理、内部監査、不適合管理、是正処置、予防処置)
- 「手順書」「規定類」「帳票類」のように階層化された煩雑な文書体系
💡【具体的な事例】
- 事例①:文書管理手順書
以前は「文書は承認者が記名押印してから紙で保管」と定めていたが、現在では電子データでの共有と版数管理で実態に即した運用に変更。手順書は廃止し、業務手順内に簡潔な管理ルールのみ記載。 - 事例②:予防処置手順書
2015年版では「リスク及び機会への対応」に置き換わっており、独立した予防処置手順書は不要に。リスク対応活動を経営戦略や部門の業務計画に自然に組み込む形へと移行。 - 事例③:品質マニュアルの章構成
ISO章立てに合わせた7章・8章などの構成を採用していたが、現場では使われず閲覧もされない状態に。実態に即した簡易なマニュアルへ刷新し、現場責任者や新人にも読みやすくなった。
これらの文書は、現在のISO要求からすれば「なくてもよい」、あるいは「簡素化してよい」ものであり、マニュアル改訂の大きなヒントとなります。
🛠 実態を踏まえた改訂の進め方
マニュアル改訂は単なる削除作業ではありません。重要なのは、今、現場がどのように運用されているかを把握することです。次の点に留意して進めましょう:
- ✅ マニュアルに書かれていなくても、ルーチン業務が安定的に回っていることを確認する
- ✅ 削除または簡素化する文書がどの業務や関係者に影響を与えるかを見極める
- ✅ 「形式的な維持」ではなく「意味のある文書」に絞る
現場に即した内容にすれば、関係者の理解も進み、内部監査や外部審査でも説明がしやすくなります。
📝 改訂作業のステップ(まとめ)
最後に、実践的なマニュアル改訂の進め方を、以下に箇条書きでまとめます。
- 📂 現在の品質マニュアルを棚卸しし、不要・過剰な項目を抽出する
- 📖 ISO9001:2015年版の要求事項と照らし合わせて、必要な情報だけを抽出する
- 👀 実際の運用状況(ルーチン業務)を確認し、マニュアルとのギャップを洗い出す
- ✂️ 影響範囲を考慮しながら、必要な文書を簡素化または削除する
- 🗣 関係者と共有し、改訂内容の妥当性を確認する
- 🔁 内部監査やマネジメントレビューで運用状況をフォローする
品質マニュアルは、組織の品質活動の「見える化」のツールであるべきです。必要なことを簡潔に、実用的に記載することが、ISO9001を真に活用する第一歩です。
みのたけISOコンサルでは、形骸化してしまったISOの運用を見直すためのサービスを用意しています。
ISO9001をすでに取得している企業を対象に、運用の効率化や形骸化したルールの見直しを支援します。前述のとおり、以前のISOで必要とされたルールや帳票を削減し、日常業務にスムーズに組み込める仕組みを提案します。
こんな方におすすめ:
- ISO運用が現場に負担をかけている企業
- 運用を見直し、経営にプラスとなる形にしたい企業
-
認証を受けずにISO9001を業務で活用する方法
記事がありません
この記事を書いた人Wrote this article
