【トラブルはなぜ起きる?】イライラしない「なぜなぜ分析」の進め方

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ISOの認証を取得した組織では、「不適合」と呼ばれるトラブルが発生した場合、原因を突き止め、再発防止策を検討します。この際によく使われる手法の一つに「なぜなぜ分析」があります。今回は、よくある効果の薄い分析にならないための進め方について解説します。

⚡ なぜなぜ分析の基本ルール

なぜなぜ分析とは、問題の表面的な原因ではなく、根本原因を特定するための手法です。問題が発生した際に「なぜ?」を繰り返し問い、真因にたどり着くことで、再発防止策を適切に講じることができます。

多くの組織では、トラブルが発生した部門の関係者数名が集まり、考えられる原因を列挙し、その背景を深掘りする形で進めます。このプロセスを適切に行うことで、「対処療法的な解決策」ではなく、「同じ問題が二度と起こらない仕組み」を作ることが可能になります。

一般的に、「なぜ?」を5回以上繰り返すことで、表面的な原因ではなく、より根本的な課題にたどり着けると言われています。ただし、単に回数を重ねるだけでは効果が薄く、適切な問いの設定が重要です。

また、なぜなぜ分析は個人の責任追及ではなく、組織の仕組みやプロセスの問題を明らかにすることが目的です。そのため、関係者が安心して意見を出せる雰囲気を作ることが成功の鍵と言われています。

🌟 やりがちな失敗「言い訳を掘り下げない」

なぜなぜ分析をする際、「言い訳を原因にしてはいけない」と言われることがあります。これは、言い訳を表面的な要因と捉え、根本的な課題にたどり着けなくなるという理由から、それを議論から除外する考え方です。

言い訳っぽいなぜなぜの例:

  • 出荷時の検査で見落としたから
    • なぜ? 出荷までの検査時間が足りなかった

しかし、ここでの「検査時間が足りなかった」というのは単なる言い訳ではなく、業務の進め方や経営判断に問題がある可能性を示唆しています。これを議論から除外すると、表面的な対策しか取れず、同じ問題が繰り返されるリスクが高まります。

🛠 「なぜそれを実行しても大丈夫と考えた?」を問う

「なぜそれを実行しても大丈夫だと考えたのか?」を追加で問うことで、根本の問題が見えることがあります。

例:

  • 出荷時の検査で見落とした
    • なぜ? 出荷までの検査時間が足りなかった
    • なぜ? 検査時間を半分にする指示があった
    • なぜ? 生産ラインのスケジュールが厳しかった
    • なぜ? それでも検査時間を短縮して大丈夫だと思った?
      • 過去にも同様の短縮をして問題がなかった
      • 現場に「多少の見落としは許容範囲」との認識があった

例えば、関係者に「なぜその対応で問題ないと判断したのか?」と尋ねると、「過去に大きな問題がなかったから」「上司がそれで良いと言ったから」といった回答が得られることがあります。これは、単なる個人のミスではなく、組織の文化や意思決定の仕組みに問題がある可能性を示しています。この視点を加えることで、経営層が現場の判断基準を見直す機会を作ることができます。

🎯 まとめ

なぜなぜ分析は、表面的な原因に気を取られずに、根本原因まで突き止めることが大切です。そのために、以下の2つのポイントを意識してみましょう。

  1. 「言い訳」と捉えず、意見としてしっかり向き合う
    • 関係者が正直に状況を話せるようにすることで、現場の実態を把握しやすくなります。
    • その背景にある組織の問題や業務プロセスの課題が見えてくることがあります。
  2. 「なぜそれを実行しても大丈夫だと考えた?」を問いかける
    • ルール違反や判断ミスがなぜ起きたのかを明らかにすることで、組織全体の風土や経営の問題にアプローチできます。
    • 過去の成功体験や暗黙の了解が影響している場合、それを見直すきっかけになります。

この2つのポイントを押さえることで、単なる対処療法ではなく、組織全体の仕組み改善につながる効果的ななぜなぜ分析が可能になります。ちょっとした工夫ですが、もし良ければ活用していただけますと幸いです。

この記事を書いた人Wrote this article

森田 康之

森田 康之

ISO9001の審査員として活動中。中小企業診断士、ISO14001の審査員補の資格を保有。企業にフィットしたISOシステム「みのたけISO」を構築するため支援を提供する。

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