部署のビジョンを作る方法

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企業が成功するためには、明確なビジョンが欠かせません。例えば、GEの元CEOジャック・ウェルチは「業界でNo.1かNo.2になる」という明確なビジョンを掲げ、全社を改革しました。また、アウトドアブランドのパタゴニアは「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限にし、ビジネスを通じて環境危機に対する解決策を実行する」というビジョンを掲げ、社会的責任とビジネスの成功を両立させています。

日本の企業においても、最近は理念やビジョンをじっくりと検討して作り上げるケースが増えてきたように感じます。さらに、ビジョンは会社全体だけでなく、各部署においても同様の効果が期待されます。部署のビジョンを作ることで、部署の方向性が明確になり、メンバーの意識統一やモチベーション向上につながります。本コラムでは、部署のビジョンを作る方法について解説します。

📌 1. 会社のビジョンを作る手順に準じる

部署のビジョンは、基本的に会社のビジョンを作る手順と同じプロセスをたどります。具体的には、以下のステップを踏みます。

  • 経営理念の確認
  • 外部環境・内部環境分析(SWOT分析)
  • 数年後のありたい姿(ビジョン)の明確化

経営理念は、企業の存在意義や価値観を示すもので、企業活動の基本方針や指針となり、長期的に変わらないものです。この理念を基盤としながら、「会社はどのように社会に貢献したいのか」「どのような未来を実現したいのか」を考えることで、ビジョンが導き出されます。ビジョンは、理念を具体的な未来像として描いたものであり、組織全体の方向性を示すと同時に、3年後や5年後に企業が将来的に達成したい具体的な目標や理想像を示します。その性格から、ビジョンは状況に応じて柔軟に変えることをある程度想定しています。

SWOT分析は、企業やプロジェクトの戦略を考えるためのフレームワークです。**「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」は内部要因を指し、企業の競争力や課題を分析します。「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」**は外部環境を評価し、市場のチャンスやリスクを把握します。この4要素を整理することで、戦略的な意思決定がしやすくなります。強みを活かし、機会を最大限利用しながら、弱みを補強し、脅威に対応することが目的です。シンプルで応用しやすく、経営戦略やマーケティングに広く活用されています。

🔍 2. 部署のビジョン作成時の留意点

部署のビジョンを作成する際には、会社のビジョン作成とは異なるいくつかのポイントを意識する必要があります。

部署の理念を考える

会社の経営理念をベースにしながら、その企業の中でその部署がどのような役割を果たすのかを踏まえた理念を設定します。部署の存在意義を明確にすることで、ビジョンの土台が固まります。また、役割が似通った部署がある場合は、競合比較の考え方を用いることも有効です。自部署の強みや独自性を明確にし、他部署と差別化を図ることで、より実効性のあるビジョンを策定できます。

内部環境・外部環境の分析

内部環境は部署内の状況(強み・弱み)、外部環境は部署と他部署の関係性も含めて分析します。具体的には、以下のような視点で考えます。

  • 内部環境: 部署のスキル、リソース、組織文化
  • 外部環境: 他部署との連携、社内の評価、業界動向

クロスSWOT分析で打ち手を見つける

SWOT分析の結果をもとに、強みを活かし、弱みを克服するための施策(打ち手)を考えます。特にクロスSWOT分析を活用し、具体的なアクションプランを導き出します。

クロスSWOT分析の手順は以下の通りです。

  1. SWOT分析の結果を整理する – 内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を明確に分類します。
  2. クロス分析を行う – 以下の4つの組み合わせを検討します。
    • 強み × 機会(SO戦略): 強みを活かして機会を最大限に活用する戦略
    • 強み × 脅威(ST戦略): 強みを活かして脅威を回避・軽減する戦略
    • 弱み × 機会(WO戦略): 弱みを克服して機会を活用する戦略
    • 弱み × 脅威(WT戦略): 弱みを最小限に抑えて脅威に対応する戦略
  3. 各戦略に基づいた具体的な打ち手を考える – どの施策が最も効果的かを検討し、優先順位をつけます。
  4. 実行可能なアクションプランを作成する – 部署のリソースや環境を考慮し、実行可能な計画を策定します。

🎯 3. 数年後のありたい姿を明確にする

会社の数年後のビジョンと照らし合わせながら、部署の数年後の理想像を描きます。先に設定した打ち手の束とビジョンをすり合わせ、整合性を取ることで、部署メンバーの納得感のあるビジョンが完成します。

✅ 4. ビジョンの影響を確認・調整する

作成したビジョンを以下の視点から検証し、必要があれば修正や追加の打ち手を考えます。

  • 全社経営の視点: 会社全体の戦略と矛盾していないか
  • 他部署との関係: 他部署に悪影響を与えないか
  • 自部署内の視点: 部署のメンバーに受け入れられるか

とりわけ、3つめの自部署内の視点はとても重要です。ビジョンの目的には、部署のメンバーを巻き込んで積極的な行動を促すことが含まれますので、時として、実現性よりも共感や思い入れを優先することも必要です。

🏁 5. まとめ

部署のビジョンは、会社のビジョンに基づきながらも、部署独自の役割や環境を考慮して作成する必要があります。しっかりとしたプロセスを経ることで、メンバーが納得し、実行可能なビジョンが完成します。特に、部署のビジョンは全社のビジョン以上に、スタッフを盛り上げ、積極的に関与・貢献させることが重要です。そのためには、メンバーが共感しやすい表現を用いること、具体的な行動につなげやすい内容にすること、そして現場の意見を取り入れながら策定することが求められます。明確なビジョンを持つことで、部署の一体感が高まり、企業全体の成長にも寄与するでしょう。

↓ 実例編もご覧ください。

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森田 康之

森田 康之

ISO9001の審査員として活動中。中小企業診断士、ISO14001の審査員補の資格を保有。企業にフィットしたISOシステム「みのたけISO」を構築するため支援を提供する。

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